インターネット家庭教師集団ヘルベテ ブログ

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杉本のヘルベテコラム「手入れ」

これは郵便局員・ヘルベテ社会科教師の杉本氏のコラムです。

「手入れ」

 先日、久しぶりに上京しました。試験を受けるためです(結果は・・・)。
 地方(群馬)の生活に慣れた私にとって、東京は別世界。人の多さに驚かされ、立ち並ぶ建物群に圧倒されました。見渡す限りのあらゆるものに、人の手が加わっているのです。都会の情報量に、私は眩暈がしました。
 幻惑させられながら試験会場にへ。会場は緑豊かな大学キャンパス。まさに都会のオアシスでした。心地よく指定の席まで向かえましたが、筆の進みは芳しくありません。落胆した私は、休憩時間中にふて寝できそうな場所を探しました。
 そこはグラウンド脇の、大きな木の下でした。木の幹には、セミの抜け殻がついていました。下草は短く刈られており、寝そべるのに適当でした。私は快い風を感じながら、葉っぱのざわつきを眺めました。とてもリラックスできる空間でした。
 ふと、養老孟司先生の「手入れの思想」を思い出しました。「手入れ」とは要は、自然に手を加えることで人間が住める環境をつくるという態度で、日本文化の特徴を表しているそうです。典型的なのは里山です。『虫眼とアニ眼』のなかでそのモデルを、宮崎駿さんのイラストで提げています。
 「手入れの思想」は、自然には多様性がある、ということを前提としています。都会は自然を排除したために、すべての注意が人間に向いてしまい、だから住みにくい、ということになります。逆に手つかずの自然は、多様性がありすぎて人間が住める環境ではない、ということでもあります。人の手を適度に加えることで、自然の多様性を生かしつつ人間が住める環境をつくる、これこそが最も人間が住みやすい環境だ、ということなのです。
 では理想に近いところはあるのでしょうか。都会でもなくて未開の地でもないところ、となれば地方はどうなのでしょう。結論からいえば、場所によると思いますが決して玉虫色ではありません。私の知っているところでは、草ぼうぼうに茂った放棄地や廃墟、空き家が点在してます。空き地に広がる枯葉色は、除草剤によってできたものです。人の手が足りないのでしょうか。わびしい風景がそこにはあります。
 人の手を加えること、加え続けることはとても労力を要するものです。それだけに実現されればとても心地よい空間となります。私が訪れたキャンパスは、まさに理想的な空間でした。都会の中に里山がある、という発見は私にとって新鮮な驚きでした。同時に、地方の現状を垣間見たようにも思われました。休憩明けの試験が論外だったこともあってか、ちょっぴりアンニュイな心持で群馬へ帰郷したのでした。